鋤田正義展

アート

いろんなところで書いているが、若い頃、ミュージシャンを顔で好きになっていた。80年代、スティング、デュランデュラン、ピートバーンズ、スティーブン・タイラーetc

デビッド・ボウイなんか、カッコ良すぎて、かっこいい日本代表部門の坂本龍一との例のシーンなんか、こっちが失神しそうだった、、、

土曜日に、ボウイのよく知られた写真を撮った、鋤田正義さんの写真展に行った。以前、ドキュメンタリー映画も見ていたので、この日のトークイベントにも参加したかったのだが、早くから売り切れてしまっていた。未練がましく、イベント時間近くなって観覧に行ったが、やはりイベントには参加できず。同行したムスメは、イベントの部屋近くで「音漏れ参戦!」なんて聞き耳を立ててたが、まあ、無理で、諦めて、作品だけを堪能してきました。

著名人のポートレートが多く展示され、どれもこれも、めちゃくちゃかっこいいのだ。こんなふうに撮ってもらえるのは、被写体の良さだけではないだろう。それを引き出す何かを、鋤田さん自身が持っているのだろう。一番その人らしい、自分がこうありたいと思う自分の魅力が存分に表現されている。


ドキュメンタリー映画の中で、「被写体を取り巻く『時代』を切り取って残したいという思いがありました」と語っておられた。たしかに、背景の街並みや人、ボウイのライブの写真の観客、そういう景色に、しっかり「時代」が刻まれている。背景のない、ポートレートでも、被写体のまとう「時代」が映り込んでいる。それは、私自身の良き時代でもあり、写真の中の「時代」に、自分の「時代」を投影させ、懐古というより、追体験のような時間を過ごした。まるで、タイムマシンにでも乗った気分だった。

展示の中では、忌野清志郎の写真が一番好きだった。素顔の清志郎が、路地裏の建物の階段に腰掛けて、ギターを弾いている。エネルギッシュなステージ姿と違って、物静かで実直な、そんな人柄が、この一枚に全て写り込んでいる、そんな写真だ。

写真やドキュメンタリー映画などで、鋤田さんのことは以前から気になっていたが、直方の出身と知って、親近感を感じた。若い頃に制作された、ポートレート以外の大きな広告スチールも数点展示されていたが、こちらも「時代」、高度経済成長の流れに乗っていたのか、勢いと芸術性にあふれた広告の時代を思い出す。父が、同じくらいの頃、広告代理店で制作に携わっていた作品の記憶が呼び起こされるようだ。奇しくも、鋤田さんと父は同じ広告代理店に勤めていたことを知った。九州出身で関西へ出たまでは父と同じで、鋤田さんはその後すぐ、東京に出るのだが、年も父と2つ違いくらい、少しは轍が交差したであろう父の「時代」を感じられた。

鋤田さんは現在、筑豊に拠を移されている。広告制作のもの以外の写真も素晴らしく、「九州の自然、特に『水』に興味を惹かれていて、これからそういう写真を撮っていきたい」とのこと。ぜひ、元気で長生きして、その作品をまた、見せて欲しい、そして、後世に残し、伝えていって欲しい。

今回、会場内は撮影禁止なので、唯一の写真は、ムスメが撮った、入り口のドアのみ。ミノシマ(未だに正しい字がわからん)のアートスペース、アングラな雰囲気とは裏腹にOverGroundというギャラリー。また面白そうなモンがあれば、ぜひ行ってみたい。